ISO 9060 規格が、PV 監視および気象観測における日射測定へどのような影響を与えるのか
日射計は太陽放射を測定するための基準センサーであり、PV システムの性能監視や気象観測で使用されています。2018 年に改訂された ISO 9060 は、日射計の分類を定める国際的に認められた規格です。この規格では精度に応じて Class A、B、C の 3 つのクラスが定義されており、測定不確かさは Class C から B、B から A へと、おおよそ 2 倍ずつ低減します。日射計が特定のクラスに属するためには、すべての仕様および分類基準を満たす必要があります。さらに ISO 9060 では、「スペクトルフラット(spectrally flat)」と「高速応答(fast response)」という追加特性も定義されています。また、同じクラス内でも実際に達成される測定精度には大きな差があるため、日射計の選定を ISO クラスだけに依存すべきではない点も重要です。
本ノートでは、信頼性の高い日射データを確保するために、ASTM G213-17 および ISO/TR 9901 に示される測定不確かさの推定と低減に関するベストプラクティスについても取り上げます。加えて、PV システム性能監視のための IEC 61724-1 規格では、ISO 9060 に準拠した日射計の使用が明確に要求されています。
はじめに
ISO 9060: Solar energy(Specification and classification of instruments for measuring hemispherical solar and direct solar irradiance)は、日射計の仕様および分類を定める国際的に認められた規格です。初版は 1990 年に制定され、2018 年には大幅な改訂が行われました。この改訂は用語の更新にとどまらず、精度クラスに適合するための要求水準を引き上げる内容となっています。
日射計の分類
日射計は ISO 9060 に基づき Class A、Class B、Class C の 3 つの精度クラスに分類されます。日射計が特定のクラスに属するためには、そのクラスに定められたすべての仕様と分類基準を明確に満たしている必要があります。表 1 に、精度クラスに適合するための仕様基準をまとめています。各パラメータの詳細な定義については規格本文を参照してください。以下に、各パラメータの簡単な説明を示します。
- 応答時間(95 %):光がステップ状に変化した後、日射計の出力が最終値の 95 % に到達し、その範囲内に留まるまでの時間。
- ゼロオフセット a:−200 W/m² の純放射に対する応答。
- ゼロオフセット b:周囲温度が 5 K/h で変化した際の応答。
- ゼロオフセット c:ゼロオフセット a、ゼロオフセット b、その他の要因を含む総合的なゼロオフセット。
- 非安定性:感度の年間変化率(%)。
- 非直線性:照度が 100〜1 000 W/m² の範囲で変化したとき、500 W/m² における感度からの偏差(%)。
- 方向応答:入射角が 90°(またはセンサー下方から)までの任意方向からの測定において、直達日射 1 000 W/m² の法線入射感度がすべての方向に対して有効であると仮定した場合に生じる誤差範囲。
- 晴天時水平面全天日射の分光誤差:ISO 9060 で定義される晴天スペクトルセットに対して観測される最大分光誤差。
- 温度応答:周囲温度が −10〜40 °C の範囲で変化したとき、20 °C における信号に対する偏差(%)。
- 傾斜応答:照度 1 000 W/m² において、傾斜角が 0°(水平)から 180° に変化したときの、0° 傾斜時の感度からの偏差(%)。
表 1 ISO 9060:2018 による日射計の仕様基準。各パラメータの説明は本文を参照。表中の値は各パラメータの許容範囲を示す。ガードバンドについては規格を参照。
| ISO 9060:2018 による日射計の仕様 | ||||
| Class A(旧称:セカンダリースタンダード) | Class B(旧称:ファーストクラス) | Class C(旧称:セカンドクラス) | Hukx SR300, SR200 (Class A) | |
| 応答時間 (95 %) | < 10 秒 | < 10 秒 | < 10 秒 | 3 秒 |
| ゼロオフセット a | ± 7 W/m2 | ± 15 W/m2 | ± 30 W/m2 | < ± 2 W/m2 (SR300) < ± 5 W/m2 (SR200) |
| ゼロオフセット b | ± 2 W/m2 | ± 4 W/m2 | ± 8 W/m2 | < ± 2 W/m2 |
| ゼロオフセット c | ± 10 W/m2 | ± 21 W/m2 | ± 41 W/m2 | < 5 W/m2 |
| 非安定性 | ± 0.8 % | ± 1.5 % | ± 3 % | < ± 0.5 % / 年 |
| 非直線性 | ± 0.5 % | ± 1 % | ± 3 % | < 0.2 % |
| 方向応答 | ± 10 W/m2 | ± 20 W/m2 | ± 30 W/m2 | < ± 10 W/m2 |
| 晴天時水平面全天日射(GHI)の分光誤差 | ± 0.5 % | ± 1 % | ± 5 % | < ± 0.5 % |
| 温度応答 | ± 1 % | ± 2 % | ± 4 % | < ± 0.4 % |
| 傾斜応答 | ± 0.5 % | ± 2 % | ± 5 % | < ± 0.2 % |
| 追加の信号処理誤差 | ± 2 W/m2 | ± 5 W/m2 | ± 10 W/m2 | なし(信号処理誤差は他の仕様に含まれます) |
2018 年改訂での変更点
2018 年版では、1990 年版と比較して以下の主要な変更が加えられています。
- 3 つの精度クラス(Class A、B、C) 旧称はそれぞれ secondary standard、first class、second class。
- すべてのクラスに追加された特性:「スペクトルフラット」 入射太陽光の波長に対して均等に応答するセンサーに適用され、POA、アルベド、背面 POA 測定に推奨される。 この特性を持つには、分光選択性(0.35〜1.5 µm の範囲での平均感度からの偏差)が 3 % 未満であることが必要。
- すべてのクラスに追加された特性:「高速応答」 応答時間が短い日射計に適用され、過照度イベントなど変動の大きいデータ測定に推奨される。 この特性を持つには、応答時間が 0.5 s 未満であることが必要。
- 新しい評価パラメータ:分光誤差 以前の評価パラメータである分光選択性に代わるもの。
- Class A 日射計に対する新要件:温度応答および方向応答の個別試験 より厳密な性能確認が求められるようになった。
限界値とガードバンド
ISO 9060:2018 では、表 1 に示される数値を各パラメータの受入限界として規定しています。これらの限界値は、測定不確かさを考慮し、誤った判定のリスクを低減するために、対応する許容限界(試験対象機器が性能を発揮すると期待される範囲)よりも意図的に狭く設定されています。 この 許容限界と受入限界の差 が ガードバンド と呼ばれます。
ISO 9060:2018 では、規格の表 1 に含まれるすべての特性について、このガードバンドが定義されています。 なお、本ノートではガードバンドの値は扱いません。
精度クラスとは何か?
ISO 9060 では、日射計の精度クラスとして Class A、Class B、Class C の 3 種類が定義されています。精度クラスという概念は、国際計量用語(VIM)4.25 において次のように定義されています。
「特定の運用条件下で、測定誤差または機器の不確かさを規定された限界内に保つことを目的として、所定の計量要求事項を満たす測定器または測定システムのクラス」
つまり、精度クラスとは「そのクラスに求められる計量性能を満たし、誤差や不確かさが規定範囲内に収まることを保証するための分類」です。
精度クラスへの適合は、同じクラスに属する他の測定システムと比較したときに、一定の測定不確かさを主張するために十分であるとされています。これは Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement (GUM) における タイプ B の不確かさ評価に基づく考え方であり、VIM(国際計量用語集)2.29 でも説明されています。
日射計の精度
Class C から Class B、そして Class B から Class A へと精度クラスが上がるにつれて、日射計の測定不確かさはおよそ 2 倍ずつ低減します。各クラスの測定精度のイメージについては図 2 を参照してください。
必要な精度が高くなるほど、次の要件も高くなります。
- 機器のコスト
- 必要な保守レベル(清掃など)
- 必要な校正精度
Hukx 日射計の多くの仕様は、要求されるクラス基準を大きく上回っており(表 1 参照)、その結果、ISO クラスだけから想定されるよりも高い測定精度が得られます。表 2 には、Hukx 日射計の各モデルとその分類の概要を示します。
表 2 Hukx 日射計の ISO 9060:2018 クラスおよび IEC 61724‑1:2021 適合性
| ブランド | モデル | ISO 9060:2018 クラス | IEC 61724-1:2021 適合性 |
| Hukx | SR30, SR300 | Class A | すべての設置場所・条件で Class A に適合 |
| Hukx | SR20, SR200 | Class A | 結露・着霜が発生する時間が 2% 未満の場所に限り Class A に適合 |
| Hukx | SR100 | Class B | 背面 POA(Rear-side Plane of Array)日射量では Class A その他の日射量測定では Class B |
| Hukx | SR05 | Class C | 背面 POA 日射量では Class A その他の日射量測定では Class B |

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