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日射計の物理:なぜ二重ドームなのか

日射計は、太陽放射を高い精度で測定するための計測器です。では、熱電対式日射計に一重ドームのものと二重ドームのものがあるのはなぜでしょうか。このノートでは、日射計の物理に着目し、熱電対式日射計がどのように動作するのか、そしてこれらのドームがなぜ必要なのかを解説します。

はじめに

すべての熱電対式日射計は熱的な原理で動作します。つまり、センサー内部に生じる温度差を信号として取り出す仕組みです。言い換えれば、熱電対式日射計は非常に精巧な温度計ともいえます。重要なのは、この日射計が太陽放射のみに応答するように設計することです。

このノートでは、日射計の動作原理を理解するための背景を紹介し、とくに「なぜ高精度な日射計では二重ガラスドームが用いられるのか」という疑問に答えることを目的としています。

日射計の基礎

名前が示すとおり、熱電対式日射計の中心となる要素はサーモパイルです。サーモパイルは、2種類の異なる導電材料を積層した構造で、スタックの「熱側」と「冷側」の間に温度差が生じると電圧を発生します。この現象は、2つの材料が持つ異なるゼーベック係数によって生じる「熱電効果」として知られています。

essential parts of a typical thermopile pyranometer: sunscreen (1), outer dome (2), inner dome (3), thermopile with sensor surface (4) and aluminium sensor body (5)
図1 典型的な熱電対式日射計の主要構成要素:サンスクリーン(1)、外側ドーム(2)、内側ドーム(3)、黒色受感面を持つサーモパイル(4)、アルミ製センサーボディ(5)
pyranometers can be used to monitor the performance of photovoltaic systems
図2 日射計は太陽光発電システムの性能監視に利用できます。

サーモパイルの冷側はセンサーボディに取り付けられ、熱側である「受感面」には黒色の放射吸収コーティングが施され、太陽光に直接さらされています。太陽放射を受けると受感面が加熱される一方、冷側はセンサーボディとの熱的な結合によって周囲温度に保たれます。この温度差こそが、センサー信号を生み出す源となります。

日射計のその他の構造は、太陽放射以外の熱交換を可能な限り抑えるように設計されています。受感面を加熱してよいのは太陽放射だけであり、それ以外の熱的影響は最小限にする必要があります。本ノートでは、望ましくない熱交換プロセスのひとつである「冷たい空との赤外放射のやり取り」に焦点を当てて解説します。

日射計の性能は、複数の評価基準に基づいて ISO 9060[1] で規格化されています。赤外放射のやり取りによって生じるオフセット信号は、その評価項目のひとつであり、「ゼロオフセット a」として定義されています。高精度な測定を行うためには、このオフセットを可能な限り低減することが重要です。

本ノートでは、次世代の日射計である Hukx シリーズ ― SR05、SR15、SR30 ― において、どのようにして「ゼロオフセット a」を低く抑えているのか、その仕組みを解説します。

最初のドームの役割

日射計に用いられる一般的な黒色コーティングは、200 nm(紫外域)から 50 μm(遠赤外域)まで、非常に広い波長範囲でフラットな分光感度を持っています。そのため、ドームのない熱電対式日射計は、太陽放射以外の赤外放射にも強く反応してしまいます。とくに、周囲温度に近い受感面は、上空の冷たい空と赤外放射をやり取りし、不要な熱交換が発生します。

さらに、裸のサーモパイルは風による対流冷却の影響を受けやすく、雨や雪などの気象条件にも直接さらされてしまいます。

晴れて雲のない日、上空の大気はおおよそ −20 °C の黒体として扱うことができます。つまり、受感面と空との間で赤外放射のやり取りが起こると、受感面はむしろ冷却されてしまいます。その結果、センサーは太陽放射を過小評価する方向に働きます。この現象を、太陽放射に対する短波感度に対比して「長波感度」と呼びます。

この効果は、特に晴天で雲のない夜間に顕著で、日射計が負のセンサー信号を示すことがあります。これがいわゆる「ゼロオフセット a」です。このオフセットは常に存在しており、日中は太陽放射による正の信号に埋もれて見えにくくなっているだけです。一方、曇天時の空の黒体温度は地上付近の気温に近いため、この効果は晴天時に比べて大幅に小さくなります。

図3 ガラスの分光透過率と地表に到達する太陽スペクトルの比較。地表や大気からの熱放射はおよそ 10 μm 付近にあり、ガラスによって遮断される。

一重ガラスドームは、SR05 のような Class C 日射計に搭載され、対流やオフセットに対する第一の防御となります。ガラスは 285〜3000 nm の範囲でほぼフラットな分光透過率を持つ一方、赤外域の大部分の放射を吸収します。これにより、ドームは赤外放射に対する遮蔽として機能し、空とドーム、ドームと受感面の間で熱放射のやり取りがそれぞれ別々に起こるようになります。これらの物理的な仕組みについては、ボックス1で詳しく説明します。

一重ドームは、対流や降雨・降雪といった外的要因から受感面を完全に保護する役割も果たします。また、ドーム形状により、日射計に求められる 180° の視野角が確保されます。さらに、センサーボディとドームが熱的に結合していることで、両者の温度が平衡に近づき、熱交換がより一層抑えられます。

SR05 is a spectrally flat Class C pyranometer. It has a single glass dome to insulate the sensor surface from infrared thermal exchange with the colder sky. In addition, the dome protects the sensor against the elements.
図4 SR05 は分光的にフラットな Class C 日射計であり、単一ガラスドームによって受感面を上空の冷たい空との赤外熱交換から遮断します。さらに、このドームは外気の影響からセンサーを保護します。

ドーム枚数は多いほど良いのか?

ボックス1で示したように、赤外放射による熱交換に対する断熱効果は、ドームの枚数が増えるほど高まります。そのため、SR30 や SR15 といった Class A および Class B 日射計には、一重ではなく二重ドームが採用されています。

ただし、ドームを追加するたびに得られる赤外断熱の向上量は前のドームよりも小さくなり、いわゆる「収穫逓減の法則」が働きます。ドームは高価であるため、二重以上に増やしても費用対効果が低くなります。さらに、透過率の低下やレンズ効果の増大といった別の問題が生じ、二重を超える構造では高精度な日射計の設計が難しくなります。

さらなる改良

Hukx シリーズの SR30(分光的にフラットな Class A〈二次標準〉日射計)では、赤外放射による測定オフセットをさらに低減するために、循環式換気加熱(RVH:Recirculating Ventilation and Heating)と呼ばれる追加技術を採用しています。

換気ユニットは、センサーボディ内部および内外二重ドームの間に空気を循環させ、センサー全体に均一な温度分布をつくり出します。理想的には、受感面と内側ドームの温度が一致し、両者の間で正味の熱放射交換がゼロとなります。実際の測定結果でも、センサーの長波感度が非常に低く抑えられていることが確認されています。

さらに、SR30 には霜、露、着氷の発生を防ぐためのヒーターが搭載されています。循環する空気は、この加熱による熱をセンサー全体に均一に広げ、局所的な温度勾配の発生を抑えます。これにより、温度差に起因する測定オフセットが最小限に抑えられます。

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