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散乱日射計とは?

散乱日射計の基礎を手早く紹介

本記事では、散乱日射計 と 散乱日射の測定 に関する基本的な技術背景を、わかりやすく解説します。

はじめに

太陽から放射される地球外放射の一部は大気を通過して直接地表に到達しますが、もう一部は大気中の気体分子、エアロゾル粒子、雲粒、氷晶などによって散乱・吸収されます。 前者が 直達成分、後者が 散乱成分 と呼ばれ、これらを合わせて地表に到達する日射となります。

散乱日射計は、日射の散乱成分を測定するための装置です。放射照度は、平方メートルあたりのワット(W/m²)で表されます。

散乱日射計は、これまで主に気候研究や気象観測で利用されてきました。直達日射と散乱日射を分離して測定することで、より高精度なデータが得られるだけでなく、詳細なモデル解析も可能になります。これは気象分野だけでなく、建築物の性能評価や太陽光発電システムの解析にも有用です。 特に、太陽光発電(PV)システムの性能をより高精度にモデル化したいという需要の高まりにより、散乱日射の測定はこれまで以上に注目されています。

本記事では、散乱日射計の基本について解説します。

  • 散乱日射計は何を測定するのか
  • なぜ役に立つのか
  • そしてどのように動作するのか

散乱日射計:太陽放射センサー

散乱日射計は、太陽放射のうち 散乱成分 を測定する装置です。これに対し、太陽から直接届く直達日射は 直達日射量 と呼ばれます(図1参照)。

多くの場合、散乱日射計は水平に設置され、水平面散乱日射量を測定します。IEC(国際電気標準会議)では、DHI を測定する散乱日射計を「直達日射の寄与を遮断、または補正する装置」と定義しています。

この 直達日射量(DNI) と 水平面散乱日射量(DHI) を組み合わせることで、地表で利用可能な太陽エネルギーの総量が求められます。 そして 全天日射量(Global Horizontal Irradiance:GHI) は次のように表されます。

GHI = DNI ∙ cos(θ) + DHI

ここでいう θ は、測定面の法線と太陽位置との間の角度で、太陽天頂角 と呼ばれます。

DHI(水平面散乱日射量)は、地理的な位置、時刻、気象条件や周囲の環境によって変化します。たとえば、雲量、降水、そして大気の透明度(空気質)は散乱日射に影響を与えます。

晴天時の典型的な DHI は 50〜150 W/m² 程度で、このとき GHI(全天日射量)の大部分は DNI(直達日射量)によって占められます。しかし、曇天時には DHI がこれらの値を大きく上回ることがあります。これは、雲が太陽放射の一部を遮り、散乱させるためです。雲が太陽を完全に覆う場合、GHI は DHI と等しくなります。

さらに、建物や雪に覆われた斜面など、地平線より上にある高反射面が近くに存在すると、局所的に DHI が高くなることがあります。

図1 散乱日射計で測定される散乱日射は、雲、大気中の粒子、エアロゾルによって散乱された太陽放射に由来します。

散乱日射計は何に使われるのか

太陽は、地球に届くエネルギーの主要な供給源です。太陽環境(ソーラー・クライメート)は私たちの生活に大きな影響を与え、地域の気候、屋外での人の快適性、そして建物の設計にも深く関わっています。また、太陽放射はエネルギー源として利用することもできます。

太陽エネルギー分野では、散乱日射計は主に次の2つの目的で使用されます。

  • 将来建設予定の太陽光発電所において、地域の気候特性や発電ポテンシャルを正確に評価するため。
  • 稼働中の太陽光発電所の性能を監視し、評価するため。

PV モジュールは、直達日射と散乱日射に対して異なる反応を示します。これは、それぞれの光のスペクトル特性が異なるためであり、散乱日射を個別に測定することが重要となる理由です。 特に 両面受光型(バイフェイシャル)太陽電池モジュール を使用する場合、その重要性はさらに高まります。バイフェイシャルモジュールは、表面だけでなく裏面からの太陽放射も吸収できるためです。

バイフェイシャルモジュールの裏面に入射する散乱日射は、主に次の 2 つの要因から生じます。

  • 上空からの 下向き散乱日射
  • 地表面で反射された 上向き反射日射

しかし、これらの成分は複雑であり、さらにモジュール下の地表面の反射特性が均一ではないため、裏面に入射する日射量を正確にモデル化することは容易ではありません。

IEC 61724-1 規格では、散乱日射の測定値を光学モデルと組み合わせることで、太陽電池モジュール裏面に入射する日射量を推定できると示されています。

散乱日射計はどのように動作するのか

散乱日射計には、いくつかの異なる動作原理があります。従来の散乱日射計は、直達日射が当たらないように常に遮光された日射計(ピラノメータ)を用いる方式が一般的でした。

IEC 61724-1 規格では、以下の方式が散乱日射計として認められています。

  • シャドーリング付きピラノメータ
  • 回転式シャドーバンドピラノメータ
  • シャドーパターンを用いたフォトダイオードアレイ
  • 遮光ディスクでピラノメータを遮るソーラートラッカー方式

これらはいずれも、直達日射を遮断または補正し、散乱日射のみを測定するという目的を満たしています。

シャドーリング付き日射計

たとえば Hukx SHR02 シャドーリング を日射計と組み合わせることで、散乱日射計として使用できます(図2参照)。 シャドーリングは南北方向に正確に合わせ、傾斜角は設置地点の緯度に基づいて設定します。また、太陽高度の季節変化に対応するため、3〜4日ごとに位置調整が必要です。

この方式は運用に手間がかかるものの、比較的低コストでありながら高い測定精度を実現できるという利点があります。

The Hukx SHR02 shadow ring in combination with the Hukx SR300-D1 pyranometer for diffuse irradiance measurements.
図2 Hukx SHR02 シャドーリングと Hukx SR300‑D1 日射計を組み合わせた散乱日射の測定例。

回転式シャドーバンド

もう一つの方法として、回転式シャドーバンド日射計 を用いて直達日射と全天日射をそれぞれ測定する方式があります。シャドーバンドが回転することで、下に設置された日射計が一定時間だけ影に入り、そのデータから GHI(全天日射量) と DHI(散乱日射量) を求めることができます。さらに、太陽天頂角を利用することで DNI(直達日射量) の計算も可能です。

シャドーリング方式と異なり、この方法はメンテナンスがほとんど不要で、基本的には日射計ドームの定期的な清掃のみで運用できます。 一方で、導入コストが高いこと、可動部を使用すること、データ解析が複雑であること、そして精度の評価が難しいこと といった欠点もあります。

シャドーパターン付きセンサーアレイ

よりシンプルな方法として、常に一部が影になるよう配置されたセンサーアレイを使用する方式があります。影になって出力が最も低くなるセンサーが、DHI(散乱日射量)を測定します。

たとえば Hukx SRD100 散乱日射計(図3)は、独自のフィボナッチ格子パターンの開口を持つシャドーマスクの下に、9つのフォトダイオードセンサーを配置した構造になっています。このシャドーマスクにより、常に少なくとも1つのフォトダイオードが完全に影に入るようになっています。

その結果、この方式では 可動部を一切使用せずに DHI を測定できる という利点があります。

図3 Hukx SRD100‑D1 散乱日射計は、シャドーパターン付きフォトダイオードアレイを搭載し、可動部なしで散乱日射を測定します。
Typical installation of SRD100, next to a normal Class A pyranometer, such as the SR300-D1.
図4 SRD100 の典型的な設置例。SR300‑D1 のような通常のクラスA日射計の隣に配置される。

遮光ディスク付きトラッカー方式

太陽放射を可能な限り高精度で測定するために、2台の日射計と1台の直達日射計(ピリヘリオメータ)をソーラートラッカーに搭載する方法があります。 1台の日射計はディスク(または球)で遮光され、DHI(散乱日射量) を測定します。 もう1台の日射計は GHI(全天日射量) を測定し、直達日射計は DNI(直達日射量) を測定します。 これら3つの成分を同時に測定することで、前述の GHI の関係式を用いて相互チェックが可能になります。

この方式は最も高精度な測定方法ですが、ソーラートラッカーの導入には大きな設備コストと運用・保守(O&M)コストが伴います。また、直達日射計は毎日の点検と清掃が必要となります。

スペクトルフラット(分光特性が平坦であること)

散乱日射のスペクトル(波長)分布は大きく変動します。たとえば、晴れた青空の散乱日射と灰色の曇り空の散乱日射では、スペクトル特性が大きく異なります。 そのため、DHI(散乱日射量)を正確に測定するには、SR300‑D1 のようなスペクトルフラットな日射計が推奨されます。

スペクトルフラットな日射計を用いて水平面散乱日射を測定する場合、全天日射量(GHI)測定と同じ校正が適用されます。 一方、スペクトルフラットでない日射計を使用する場合は、個別に不確かさ評価を行う必要があり、さらにその校正がどの太陽スペクトル条件で有効なのかを明示しなければなりません。

The spectral distribution of diffuse tilted irradiance. Data from the ASTM G173-03 Reference Spectra.
図6 傾斜面における散乱日射のスペクトル分布。ASTM G173‑03 標準スペクトルのデータを使用。

散乱日射計の選定

フィールドで信頼性の高い散乱日射計測を行うには、前述の各方式に応じて、さまざまな実務的な要素を考慮する必要があります。 これらの要素は、散乱日射の測定方式ごとに表1にまとめられています。

表1:散乱日射測定における各方式の利点と欠点

散乱日射計
モデル

SRD100

(最も便利)

SHR02 シャドーリング

(中間)

ソーラートラッカー

(最高精度)

精度基本中程度
メンテナンスコスト
導入コスト中程度
設置スペース

参考文献

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